耳鼻咽喉科 Otorhinolaryngology

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アレルゲン免疫療法について - おもに花粉症に関して -

 現在スギ花粉症の治療の主流は、薬物療法です。本格的に花粉が飛散する前から薬(内服薬や点鼻薬など)を服薬することにより、花粉飛散中の症状を抑えることができます。服薬期間はスギ花粉飛散前から花粉飛散が終了する頃までということで、おおよそ2か月くらいということになります。

 アレルゲン免疫療法は、抗原(原因となる物質:アレルゲン)が明らかなアレルギー性鼻炎や気管支喘息などのアレルギー疾患の根本的な治療法として注目されています。今回の場合はスギ花粉症の治療ということになります。アレルギーを引き起こす原因物質を体の中に入れることで、その物質に対して反応しなくなるように体内の免疫反応を変化させていく治療です。アレルゲンを体の中に入れる方法として、以前から施行されている注射による方法 -「皮下免疫療法」という- と、舌下の粘膜から吸収させる方法 -「舌下免疫療法」という-があります。

 一般的にアレルゲン免疫療法は、治療開始から効果発現までにかなりの時間を要すること(即効性のある治療ではない)、アレルギーの原因物質を体内に入れることから重大な副反応が起きる可能性があることの二つが最も大きな特徴といえます。

 効果発現までには、まだはっきりとした見解はありませんが、1~2年以上かかることが予想されます。そのため免疫療法を始めて1,2年目の花粉シーズンにはアレルギー治療薬も併用しないと症状のコントロールができないこともあります。一旦始めたら、途中でやめないで続けることが大事です。

 薬剤については、どの薬剤も副作用が起きることが考えられます。このアレルゲン免疫療法についても同様です。もともとアレルギーを起こす物質を体内に入れることからアレルギー反応に関係した副作用が見られることが多いようです。
 全身的な副作用として、服薬後蕁麻疹が出たり、発疹がでたりといった皮膚症状や、下痢症状、また花粉症と同じような鼻炎症状(くしゃみや鼻汁)が発生することが報告されています。また一番重い副作用としてアナフィラキシーショックがあります。これは服薬後数分以内に呼吸困難・意識低下・血圧低下といった症状が発現し、生命予後に関係します。
 局所的な副作用として、皮下免疫療法では、注射の後が赤く腫れたり、かゆくなったりすることがあります。舌下免疫療法では舌の裏の腫れやかゆみ、口腔内の腫れ、のどや耳のかゆみ、のど違和感、といった口腔内の反応がよく見られます。こういった局所の反応は、舌下に薬剤を入れてすぐ反応が見られるときと、内服後数分して発現することが多くみられています。こういった反応は数分から数時間以内に治まってしまうことがほとんどです。数日で治まっていくこともありますし、長期間続くこともあります。

ヨーロッパでは30年前から舌下免疫療法が始まっており、少なからず副反応が見られているようですが、効果については概ね良好な結果がでています。ただし一番大きな問題点として、この治療法を途中でやめてしまう患者さんが非常に多く、長続きしないということです。この治療は自宅でできますが、これまで以上に服薬時の注意点を守って行っていくことと、継続することが大事です。

これまでのまとめ
  • アレルゲン免疫療法は、注射による方法-「皮下免疫療法」という-と舌の裏に抗原を置く方法-「舌下免疫療法」という-がある
  • この療法は抗原が関与するアレルギー疾患の根本治療であるが、即効性がない治療である。
  • 効果発現までに数年かかることが予想される。
  • 副作用が起きることがある。特に舌下免疫療法では口腔内の副作用がみられる。
  • 服薬の注意点を守って、継続することが大事である。
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